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2023年12月1日西院SUBMARINE

2023年12月1日西院SUBMARINE

w/藤谷祐太、ハイジ



1ブルーサルビアのにおい

2四天王寺さんの砂は僕の骨でできている

3金木犀の匂いがする、不安のように、

4マルコは死んだ


10月にSUBMARINEでワンマンライブをした。11月にネガポジでツーマンライブ。それからバンドセットの練習を本格的に開始し、この日のライブに至った。前回10月のワンマンライブでの私の演奏と、今回の演奏では、私自身の感覚によると、まったく違ったものとなった。


力の込め方がちがった、と思う。ワンマンライブでは気合が入っていた。今回は力みが抜けていた。ワンマンライブのときに、私の持ち曲をすべて歌い切った。それによって、それ以後は、持ち曲を歌う時に、すんなりと歌えるようになった。「ワンマンのときに歌ったし、次に歌うときはいつでもいける」。すべての鞘から刀を抜き出して、一度点検をしたから、いつでも抜くことができる。どこからでもかかってきなさい。


バンドセットの練習によって、自分の曲を多角的に見ることができるようになった、ということも、大きな違いだ。バンドでは、ドラム、ベース、ギター、ボーカル。この四つの要素に分解して、一つにまとめる。バンドは、弾き語りよりも、実は「シンプル」になるのである。私ひとりの役割としては、やることは限られてくるのである。それで、弾き語りにもどってくると、そのやるべきことを、究極的には、やればいいのだと自覚することができているから、音数も減らすことができる。とはいえ、バンドメンバーの音がないのだから、アコースティックギターは弾き続けるのではあるけれど。その音の出し方に、幅を持たせることができる。技術的にはできないかもしれないが、心理的にそのようなものであるから、余裕をもって演奏をできる。


新曲を2曲たずさえてきた、ということも大きい。一か月に一曲は新曲を作っている。一か月に一回はライブをするのであるが、そこで新曲をもっていっている。そのようなことが、だいたいの作業の循環になっている。その曲の作り方にも、変化があった。新曲について、自信をもって、発表することができている。


旅をして、一日歩きつづける。その経験をもとに歌を作るようにしている。「金木犀の匂いがする、不安のように、」と「マルコは死んだ」は、旅で一日歩きつづけたことをもとにしている。「歩いた」ということはもう間違いがない。経験に嘘はない。


SUBMARINEはライブ会場と食事会場が分かれている。食事は立ち飲みの狭いスペースとなっている。ライブ後に、演者とお客さんが、知り合いによって別席になることなく、一か所に集まって、自然に感想などを言い合うことができる、よいスペースとなっている。


そんななかで、新曲「マルコは死んだ」について、お客さんから質問をうけることがあった。「マルコって誰?」というものだ。これについては、応えることを差し控えさせていただいた。マルコとはだれか、それを考えてもらうことの方が、おもしろいからだ。また、歌を聴いたときに、それを聞いた人の中に、マルコに該当する人が想像されるのではないか、とも思うのである。私も、歌いながら、様々なマルコが生まれては消えていく。「あなたはマルコを誰だと思いましたか?」そう聞き返せばよかったかもしれない。でもそんな必要はない。きっとそれぞれのマルコがいて、それは秘密でよいのである。


旅の経験を歌にしたのだから、マルコというものも、その旅に由来している、ということは言っておいてもよいだろう。奈良の飛鳥にある「マルコ山古墳」に登ったことに由来する。ただし、史実的には、この古墳に葬られているのは「マルコ」という人ではない。同じ飛鳥に、「キメラ古墳」というこちらも有名な古墳があるが、これも「キメラ」という人が葬られているわけではないのと同じである。けれども、私がマルコ山古墳にのぼったとき、ある感銘をうけた。その古墳のなかに葬られている人物と出会うような思いをしたのである。古墳という土に覆われたものの、覆いがすべてはぎとられたような思い。それがどのような思いなのかは、歌に歌ったとおりである。とにかく、私はその墓の内にいる人物をマルコ山古墳からとって「マルコ」と名付けた。そういうことである。


「マルコとは誰か?」。その問い自体を、この歌は歌っているといえる。マルコは、私である。事前予約をした玉城さんでもある。線香を立てて消え去った地元の人でもある。女子野球部の投手でもある。母でもある。正月の女でもある。キリストの聖顔でもある。


歌うばあい、歌う私には、死者などの、存在しない者も含まれる。私とは、むしろ窓であり、窓は光を通して、窓際には、聖女が祈っている。


考えるのはもうよそう。考えるよりも、歩きたいと思っている。


次回のライブはバンドセットである。12月31日大晦日。京都西院ネガポジ。

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